あれから10年、池袋は「Vtuberの聖地」へ変貌
2020年1月に開催された「HATSUNE MIKU EXPO 2020 EUROPE」を大成功させた初音ミクさん。
ロンドン、パリ、ベルリン、アムステルダム、バルセロナのヨーロッパ5都市を巡るツアーとなりましたが、その熱狂冷めやらぬ間に4月からは北米を舞台にアメリカとカナダを巡る「HATSUNE MIKU EXPO 2020 USA & Canada」がスタートします!
クリプトン・フューチャー・メディア株式会社(本社:北海道札幌市、代表取締役:伊藤博之、以下クリプトン)は、当社が展開する『初音ミク』が、2020年4月に開催される米国最大級の音楽フェス「コーチェラ・ヴァレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバル」(以下「コーチェラ」)に出演することが決定したことを発表いたします。また、同時期に北米で開催する「HATSUNE MIKU EXPO 2020 USA & Canada」の開催都市に、既に発表済みの9都市に加えて、以下の3都市を追加いたします。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000052709.html
海外でも大人気の初音ミクさん!
日本でも、現在は毎年「マジカルミライ」というイベントが開催されていますが、こうしたライブイベントの先駆けとなったのが2010年3月9日に開催された「ミクの日感謝祭」です。実際にはその前年に「ミクフェス ’09(夏)」が開催され話題になっていましたが、本格的な一つのライブとして開催されたのが「ミクの日感謝祭」。
VOCALOID「初音ミク」が発売されたのは2007年。
そこから様々なVOCALOID楽曲がネット上を席捲し、満を持して開催されたライブでは、日本のみならず世界中にカルチャーショックを与える事になり大きな潮流となっていきました。
2010年3月9日は3月だと言うのに雪の降る悪天候。幸いにもチケットをゲット出来た管理人はライブの帰り道、脳を揺さぶるヤックデカルチャーに「いったい今日、自分は何を見たんだろう?」と泣きながら寒い雪の中を帰っていた記憶があるのですが、それくらい当時の世界を塗り替えていく感覚は凄まじく、新しい文化が今まさに生まれようとしているという強烈な熱狂シーンがそこにあったのを憶えています。
あれから10年が経ち2020年になりました。
現在ではVtuberなどを筆頭にバーチャルキャラクターを使ったライブというのも一般化しましたが、それがこの10年の歩みであり進化です。
あの任天堂さんまで参戦しているのは本当に面白い!
ここで世代的な話をすると、VOCALOID楽曲は誕生当時、既存の音楽に対する全く新しいカウンターカルチャーでありロックでした。その濁流の中にいたのがボカロ1st世代だとすると、そこから一つ下の世代になると、VOCALOIDを使った音楽が当たり前に自分達の音楽としてある層になります。この世代にとっては既にボカロはカウンターカルチャーではなくメインカルチャーであり、具体的に言えば「千本桜」を卒業式で流そうというムーブメントの当事者だった高校生くらいの層が該当します。
更にそこから下の世代、ここまで来るといよいよ「Vtuber」という文脈が登場してきます。「Vtuber」と言えば「Youtuber」の対比として語られる事が多いですが、ライブイベントなどバーチャルアイドル的な側面から見れば、文化的にVOCALOIDから繋がっている事は明らかで、世代としては3世代分の繋がりがあるということです。(もっと言うと古来マクロスくらいから繋がっている)
そして今まさに「Vtuberの聖地」として台頭しつつある池袋は、言ってみれば2010年の「ミクの日感謝祭」から連なっている10年後の未来。
途方もないロマンを感じないでしょうか?
あれから10年、池袋は「Vtuberの聖地」になりました。
「Vtuberの聖地」とは何か?
「Vtuberの聖地」として名乗りを上げているのは何も池袋だけではありません。
秋葉原と名古屋も同様に「Vtuberの聖地」に名乗りを上げており、それも納得の2大都市です。
世界的にも知られる「オタクの聖地」秋葉原は観光大使としてミライアカリさんを起用し、「秋フェス2018秋」を開催。
秋葉原関連企業の出資で、街の観光活性化のために設立された合同会社AKIBA観光協議会(本社:千代田区神田佐久間町/代表 泉 登美雄)主催で、10月18日から「秋フェス2018秋」を開催します。株式会社明治がスポンサーになり、キズナアイと総勢14名のバーチャルYouTuber(バーチャルユーチューバー)と秋葉原の約60店舗の店舗とのコラボキャンペーンを行うなど、街を盛り上げる施策を実施します。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000038172.html
毎年、世界コスプレサミットを開催する名古屋も「ナゴヤVTuberまつり」を開催。数多くのVtuberが参加する大型イベントとなりました。
秋葉原と名古屋は「Vtuberの聖地」として同じアプローチを取っています。
Vtuberを集めて何か大型イベントを開催し、それをもって「Vtuberの聖地」であるという発想です。
これは全く正しい方向性です。
管理人も過去に参加した事がある初開催時の「世界コスプレサミット」は、商店街を回るだけの小さなローカル街イベントでしたが、名乗ったもん勝ちで今では本当にグローバルなイベントに成長しています。
では池袋はどうなのでしょうか?
そもそも池袋は「Vtuberの聖地」などと名乗っていません😅
そんなことを言っているのは管理人くらいで他にあまり見かけないのですが、これといって池袋ではVtuberを集めて何か大掛かりなイベントをやろうというような目立った動きがあるわけではなく、秋葉原、名古屋の2都市とは明らかに温度差があります。
にも関わらずそれを主張しているのは、「池袋HUMAXシネマズ」で、映画専門アンバサダーとして「夜子・バークバンク」が就任したり、グランドシネマサンシャインの開業、「Hareza池袋」内に開業予定のTOHOシネマズといった巨大なシネコンと差別化する形で「Vtuber劇場」化している流れがあったり、バーチャルアイドル・Vtuberなどのイベントを行うべく専門の設備を揃えた未来型ライブ劇場 “harevutai”の開業、更に今年春にはシネマサンシャイン跡地にライブエンターテイメント施設「Mixalive TOKYO(ミクサライブ東京)」が誕生したりと、そうした一連の変化を下に、池袋が「Vtuberの聖地」であると主張しているにすぎません。
要は※個人の感想ですにすぎない!🤣
みなさまはじめまして、HUMAXシネマズ公認の “映画専門” VTuber 夜子・バーバンクでございます。
これからYouTubeや映画館を拠点に、皆様に「映画の楽しみ方」を広めるために活動させていただきます。#夜子バーバンク#新人VTuber pic.twitter.com/gUpZC5EHVA
— 夜子・バーバンク@映画紹介VTuber (@Yoruko_burbank) January 26, 2019
つまるところ、池袋の「Vtuber」に対するアプローチは、何か象徴的なイベントを開催するという方向ではなく、環境を整えるインフラ整備が先行して進んでいる形になっています。勿論、「AZKi」さんや「ときのそら」さんなど、「Vtuber」のイベントも沢山開催されているのですが、「Vtuberの聖地」を目的として開催されているわけではないのが他の2つの都市と違うところです。
文化の発信拠点っていうけど、何を発信する?
だから何なの?
という話なのですが、この秋葉原・名古屋と池袋の“違い”は何を意味しているんだろう? ということを考えたとき、単に「Vtuberの聖地」を名乗る。その為にVtuberを集めて大掛かりなイベントを開催するというアプローチは、上段の話に戻ると10年後に文化として繋がっていくのでしょうか。行くかもしれないし行かないかもしれない。
「Vtuber」だけを切り取って「Vtuberの聖地」というポジションを得る事はあまり意味がないのではないか、今の「Vtuber」という文脈の一つにVOCALOIDから繋いできた10年間があるとすれば、10年後に新しい形の文化へと繋がっていかなければ、それを内包する意味がないのではないか、という気がしてきます。
そもそもこういう疑問が出てくるのも、「池袋」という街自体が、再開発における池袋の未来戦略として、文化の発信拠点を目指して大改造中だからなのですが、だとすると、その大前提として掲げられている「文化の発信拠点とは何か?」という事が、まさに疑問としてぶつかります。
簡単に「文化の発信拠点」とは言うものの、それがどういう意味なのか、何を発信するのか、それは池袋でなくては駄目なのかといった様々な疑問が湧いてきます。
そこでもう一度話を戻すと、確かに10年前「VOCALOID」という文化が強烈に海外にまで発信されていました。驚くべきスピード感で世界を塗り替えていった。完全に「Tell Your World」の世界だったわけです。更に遡ると15年前、秋葉原という文化がこれもまた強力に発信されていました。それより前だと原宿とかになりますが、最近だと良くも悪くもハロウィンや大晦日などで何かを渋谷の様子が発信されています。
しかし、秋葉原にしても渋谷にしても原宿にしても、当時そこで発信されていた文化というのは、行政とは完全に切り離されたものでした。秋葉原にしても自然と電気街、オタク街になっていったのであって、政策でそうしようと思ってそうなったわけではありませんし、竹の子族やガングロギャルも別に原宿がそういう層を集めたり作ろうとしてそうなったわけじゃない。池袋だってカラーギャングをわざわざ呼んだりしてないわけです。
しかし新しいアプローチとして池袋、そして渋谷では行政に「文化の発信拠点」を組み込もうとしているわけですよね。それを前提に再開発が進んでいます。
じゃあ「文化の発信拠点」って何を発信するの?
ということになるのですが、単純に「Vtuberの聖地」というだけのポジションの獲得は、今の世代にとってはベストマッチなのでそれで良いのですが、文化の連続性から切り離して考えてしまうと、10年後、Vtuber文化の下の世代がメインに来た時、それはやっぱりそこに古さを感じるのは避けられないのかもしれません。だからあまり「Vtuberの聖地」という事に拘る必要はないんだろうと思います。
それで「若者の街」、「文化の発信拠点」を維持できるかと言ったら難しいのでは? という事にならざるを得ません。
文化の連続性が途切れていると、どうしても古くなっていきます。再開発の失敗が大きいのか、秋葉原は今ではすっかり色褪せて魅力や存在感を失っています。戦後闇市→電気街→オタク街という繋がりを持って変化してきていたのが途切れてしまった事で、今や無個性で小奇麗なオフィス街へと大変身しました。それで何を発信するってんだよ!
ということになってしまうわけで、テーマなき変化も駄目なら、一つのテーマのみに固執することも駄目。
「文化の発信拠点」を続けていくには、10年後にも対応出来る柔軟性と、万世一系的な連続性を持った変化が求められるのではないでしょうか。
この繋がりをどう担保していくのか、しかもそれを池袋や渋谷は行政に組み込んでコントロールしていこうとしているわけで、この試み自体が10年後に成功しているのか失敗しているのか全く未知数です。
ミライにはロマンが必要?
2010年3月9日の「ミクの日感謝祭」は、あのたった2時間ばかりの短い時間に未来を垣間見せる力がありました。これから世界が大きく変わっていくのではないかという途方もないワクワク感、壮大なロマン、大いなる期待、揺さぶられる感情、それらが世界中に伝播したからこそ大きなムーブメントになっていき、そしてそれが一つの文化として定着していったのですが、池袋にも同じ可能性を感じています。
そういったものが明確に形になり始めたのが2012年頃なのですが、それより前から様々な理由から徐々にその機運はありました。それを個人的に細々とまとめる為にこのブログが誕生したのですが、いつの間にかこんな風になってしまったっていう。何処で道を間違ったのか……😭
つまるところ、あのとき垣間見た10年後が、今の池袋で「Vtuberの聖地」という形で顕現しているのだとすれば、「文化の発信拠点」として、池袋が2030年に最先端の文化を発信出来ているのかどうかというのは、今の池袋から見えてくるはずです!
「文化の発信拠点」、その真価が問われていますね!
そしてそれは勿論、「乙女の聖地」という池袋本来の個性ともクロスして変化していくはずです。
その結果がどうなるかは……。
10年後をシュルクもビックリの未来視(ビジョン)で垣間見るには、Hareza池袋の完成を待つ必要があるんだろうなぁ……。