進化したクールジャパンを使った「街おこし」
15年くらい前から取沙汰されているクールジャパンを使った「町おこし」。
『らき☆すた』での埼玉県鷲宮町(現在は合併で久喜市に)の成功や、『花咲くいろは』の舞台で、すっかり定着した地元祭り「ぼんぼり祭り」が愛されている石川県湯涌温泉、『ガールズアンドパンツァー』の聖地、茨城県大洗町の成功など、かつて「聖地巡礼」が盛んになると、国地方レベルで「イケるやん!」という機運が盛り上がり、クールジャパンを使った「町おこし」というものに注目が集まりました。
「コンテンツツーリズム」といった言葉も作られるなど、“アニメを使った町おこし”の可能性に大きな期待が寄せられましたが、あれから10年以上が経過した今も未だそのモデルは確立しておらず、すっかりその火は消え去り意気消沈といった状態になっているのが現在の状況ではないでしょうか?
理由としては分かり易いのですが、アニメを使った町おこしが成功する為には、絶対に必要な条件が3つあります。
①.アニメの舞台になること
②.そのアニメが一定以上ヒットすること
③.地元住民の理解
この3つの要素が全て揃わないと成功はあり得ません。
上記の成功した自治体は、全てこの条件を満たしてます。
そしてこの3つの条件は、③を除き運要素に占められています。
自分達の地元が「アニメの舞台」になるという幸運、そしてそれが「一定以上ヒット」するという幸運。
この2つの幸運を満たさなければ、そもそもステージにも立てないのが「クールジャパンで町おこし」。
運ゲーすぎてそもそも成立しようもないので早々に破綻しました。
ありがちだったのが、地元が乗り気で全力プッシュしていたのにアニメの出来が微妙で不発したパターンです。
『輪廻のラグランジェ』の鴨川とか、『メガネブ』の鯖江市とか。放映日に市長が人を集めて一緒に鑑賞会をやったりしていましたがその結果は😭😭😭
③だけ満たしても上手くいかないのが難しいところです。
そんなわけですっかり下火になりましたが、じゃあ完全に消え去ったかというとそうでもありません。
そんな中、1作品に頼らない方法で成功したのが徳島県です。
「マチ★アソビ」は、アニメ制作会社のUfotable(ユーフォーテーブル)が、徳島県に会社があることから始まったイベントでしたが、大きな成功を収めこれまで着々と規模を拡大させてきました。(ユーフォーテーブルの脱税疑惑などで揉めたものの現在も継続されている)
このような作品単体に頼らない「町おこし」手法にも成功と失敗があるようです。
「〇〇の聖地」というわけでもなく、アニメや漫画などの文化に理解がないまま、とりあえず話題になっているからと辺鄙な場所でアニメイベントをぶち上げた結果、散々な結果になった自治体があったり、やはり最低限の理解と、そのイベントが開催されるだけのバックボーン、背景がないとどうにも成功は難しいようです。
結局のところ、こうした過去の経緯を鑑みれば、クールジャパンで「町おこし」というのは難しいというのが結論ではないでしょうか?
池袋は何時から「アニメの聖地」なの?
豊島区では、「国際アート・カルチャー都市」構想を掲げており、豊島区を「アニメの聖地」、「マンガの聖地」としてPRしています。
豊島区椎名町には、かつて数多くのレジェンド漫画家が暮らしていた「トキワ荘」があり、手塚治虫や石ノ森章太郎、赤塚不二夫といった伝説の漫画家達が誕生しました。
そんな豊島区では、現在「トキワ荘 復元プロジェクト」が進行中で、2020年3月に完成予定となっています。
そのような背景から、豊島区が「マンガの聖地」を名乗ることに全く異論はありません。
しかしそこで疑問です。漫画は良いけど、「アニメの聖地」を名乗るだけの根拠は何処にあるのでしょうか?
実はそこに深い背景はありません。アニメ制作会社が沢山並んでいる練馬区の方が「アニメの聖地」を名乗ることに正当性があります。
実際に、豊島区、練馬区、杉並区は協力して「アニメの聖地」を訴えていたりするのですが、ここから分かるのは、ある程度は言ったもん勝ちということです。
名古屋も、開催当初は単なる一コスプレイベントに過ぎなかったものを「世界コスプレサミット」と名付けたことで今があります。
池袋も、「池袋ハロウィンコスプレフェス」と名乗っていますが、アレは開催時期をハロウィンに合わせているだけで、実際にはハロウィンとは何も関係ないイベントであり、ハロウィン面をしているだけです!
しかし、ハロウィンと名乗っているので、括り上ではハロウィンイベントとして取り扱われています。
実際には毎月定期開催されているアコスタの拡大版なのですが、まさに言ったもん勝ちの世界。
ではここで次の疑問が湧いてきます。
つまり、池袋は「アニメの聖地」を名乗ったから成功したのか? という疑問です。
それこそがまさに帰ってきたクールジャパン!
企業主導型「池袋モデル」。
日本ハムファイターズの本拠地を誘致した北広島市に学ぼう!
確かに池袋は、もともと「乙女ロード」があるなど、秋葉原と同じようなポテンシャルを秘めていました。
しかし秋葉原と決定的に違ったのは、「国際アート・カルチャー都市」に至る再開発の核心部分にアニメイトさんを組み込んだことです。
「国際アート・カルチャー都市」構想のプロデューサーとしてもアニメイトさんやドワンゴさんが入っていますが、この構想の主導的存在として、再開発を牽引する重要なポジションに位置付けられたことで、池袋のオタク街化はありえないレベルで進んでいます。
「IT拠点化」を掲げた秋葉原が再開発で無個性化していったのとは対極の構図になっていますね!
池袋という日本でも有数の巨大な街に、これほど大きくアニメイトさんの意思が働いているという事実はちょっと信じがたいですが、紛れもない事実です。
しかしだからこそ、真に迫った再開発になっており、針の穴を通すようなピンポイントでクリティカルな再開発が実現しています。
遠く北海道でプロ野球の日本ハムファイターズを誘致した北広島市も似ています。札幌ドームから出ていきたがっていた日本ハムの誘致にすぐさま動くと、様々な厚遇で本拠地の誘致を決定させました。
逆に出ていかないだろうと高を括っていた札幌市と札幌ドーム側は、日ハムの本拠地移転で札幌ドームの赤字化が決定し、今になって顔面ブルーレイで慌てだすなど、その行政手腕の差で、北広島市の市長と札幌市長は良く比較されています。
池袋にしても、北広島市にしても一歩踏み込んだ再開発になっているところがポイントです。
一般的に再開発のコンセプトは無難で抽象的なものになりがちです。
どの層からも異論が出ないように当たり障りのない曖昧なものとなり、その為に具体性に欠け、何処にでもありがちで耳障りの良い小奇麗でつまらない、面白味のない計画が出来上がります。
しかし、池袋や北広島市は、「もうその方向に進むしかないんだ!」という「失敗した者には死を」レベルのショッカーの掟並に背水の陣を引いています。
「後戻りする気はない!」という振り切っているからこそ出来ることであり、そしてそこに大きく特定の意思を持った企業が介在することで、例え一部から非難などがあったとしても、先鋭的な街作りを可能としています。
こうした事から考えると、一つの結論に辿り着きます。
地方に必要な企業はイオンではない!
そもそも失敗している地方都市
このような発想に至った背景には理由があるのですが、少し前に遠出する必要があり、その際少し時間があったので街をブラブラしてみたのですが、記事内に載せている画像はそのとき撮影したものです。
何処の県かはあえて言いませんが、どう思います?
ラクーンシティかよ!
住民がゾンビにでもなっているのでしょうか?
全く人の気配がありません。無人の街と錯覚するかのような静けさです。一応、車は走っているのですが、ただそれだけで静寂が支配しています。
トップの画像は商店街の様子ですが、これを見れば一目で商店街が死んでいる理由が分かります。車社会の地方では、街の中を人が全く歩きません。よって商店街が成立しないQED。
恐ろしく単純な理屈です。
国道沿いの家電量販店やイオンなどに人が集まるのは巨大な駐車場を構えているからであり、家から車で向かうとして、その途中にある駐車場のない商店街などにまず見向きもしません。
その結果、駅を中心とする市中心街が空洞化し、郊外のショッピングモールなどに集中するドーナツ化現象が起こります。少し歩いてみてまざまざとその現実を感じました。そりゃあ商店街も廃れますよね。
人口が多く鉄道網が発達している東京などでは、目的地に歩いて向かう中、商店街があればそこに立ち寄ったりといったことが当たり前に出来ますが、画像のような街はもうそういうことが構造上あり得ない状態に陥っているので、このような形に開発してしまったことが失敗なんでしょうね。
誰も住んでいないのに取り壊されもしないで放置されている空き家も大量にあり勿体ない限りです。
このような状態で若者が外へ出て行ってしまうという嘆きは何とも空虚に聞こえます。こんな活気のない状態で残りたいなんて若い子はそういないのでは?
こういう状態になっている以上、何かしら一つビルを建てたからといって改善する見込みはありません。こうなってしまったら、もうこれを活性化して地方創生を図るのは不可能に近いように思います。
それこそ北広島市のようにプロ野球の本拠地を誘致してボールパークを作るといったようなウルトラCで千載一遇のチャンスをモノにする具体的で波及効果のあるような計画でもないとどうにもならなそうです。
若者は外にしかいないの?
観光地的な発想があるのか、外から人に来てもらい活性化を図るという話が良く出ます。
しかし、実態としては外からの人が来ることを考慮する以前に、中の人も寄り付かない状況です。
高齢化して若者がいないからしょうがないじゃないか! と、思うかもしれません。
良くそういうことも言われるんですけど、一度、自分達の街で開催されている同人誌即売に足を運んでもらいたい!
全国の地方都市で同人即売会は開催されていますし、実はこうして画像として紹介している街でも「コスプレ」イベントが行われています。
そうこのラクーンシティでもコスプレイベントが開催されているのです! そしてそこにはちゃんと多くの若者がいます。
管理人が昔、某地方都市の50スペースくらいの規模で開催されている同人誌即売に参加したとき、その熱気と活況、この街にこれだけの若い世代がいるという事実に感動を覚えたことがあるのですが、そういう熱量、若いエネルギーを街が救い上げられていないことに本当に残念に思いました。
その為にはカルチャーは有用です。名乗ったもん勝ちですし、若い人にとって魅力があります。
しかし、その使い方が難しく、まずもってお役人では活かすことは不可能。政府ですらクールジャパンは失敗しています。やはり企業主導でやるしかないんだろうと思いますが、結局はその判断、命運を託す事が出来か出来ないかという事に掛かってくるんでしょうね。
それを考えると、池袋が迷いなくこの方向に進んでいることは奇跡と言えるのではないでしょうか?
そしてそれが「成功」となるのか「失敗」となるのか、その結果が出るのは5年後くらいになりそうです。