池袋の再開発、理由は“消滅可能性都市”って本当?その真相とは

「消滅可能性都市」と「乙女の聖地」が作った矛盾

移転などが相次いだ2013年

大きく現在の方向に動き出していた池袋にとって、2014年はある意味非常に矛盾した年となりました。

2014年に豊島区×アニメイト×ドワンゴというタッグで始まった「池袋ハロウィンコスプレフェス」が意味するように、この頃既に豊島区としては、乙女ロードに若い女性が集まる「乙女の聖地」という特徴を最大限活用し、文化の街として再開発を推していく方向に明確に踏み出していました。

そこで出てきたのが、その状況と相反する「消滅可能性都市」です。

「消滅可能性都市」では、若い女性が減って豊島区が消滅するという主張をしているのに、池袋では若い女性が集まっている事から、その力を使って文化の街として発展させようという動きになっていた。

それはある意味では水を差されたような、降って湧いた衝撃的な報告書。
しかしこの「消滅可能性都市」への認定こそが天啓となりました。

目に見えない「文化」を信じられるか?

この状況で豊島区が行ったのは、「消滅可能性都市」を最大限利用することです。

池袋はオタク街的な方向性で再開発を進める中にあって、「消滅可能性都市」への認定は大きな説得力を持ちました。

“このままだと若い女性が減る。だから若い女性が集まるようにしなければならない。その為には若い女性が集まっている池袋の特長を伸ばせば良い。”極めて論理的です。

そもそも文化で街を発展させようというコンセプトは、産業実態が希薄な事から実感として持ちづらい側面があります。

2012年時点で池袋がこれから大激変していくのでは? といっても全然周囲には伝わりませんでしたが、目に見えないものを信じるのは難しい。

地域の特色を活かして地場産業を伸ばそうといった事は受け入れ易くても、いきなり漫画やアニメで街を発展させていこうという方針にベッドするのは勇気がいります。明確な根拠がないと周囲を納得させるのは難しい。目に見えない文化に街の未来を賭けるというリスキーな事はまず不可能です。

しかし、池袋にはその環境があった。それを実現させたのがアニメイトであり、その方針を後押しするものとなったのが「消滅可能性都市」だったのではないでしょうか。

豊島区にとって「消滅可能性都市」は実に都合が良かったはずです。

勿論、実際に危機感を抱いたというのは事実だったと思います。しかし、この「消滅可能性都市」への認定こそが「再活溌」を勢いづかせました。

それはまさに「大義名分」。
豊島区が声高に「消滅可能性都市」を喧伝するのは、対外的なアピールにもなっています。

歴史上の「IF」。アニメイトが移転しなかった世界で「再開発」はどうなる?

乙女ロードという安全で隔離された絶対的な聖域があるにも関わらず、アニメイトがそこから飛び出して街の中心部に打って出るのは大きなリスクを伴う行為です。環境的にも乙女ロードからの異世界転生と言っても良いでしょう。結果的には大成功を収めますが、かなり先まで見通していなければあの段階での移転は難しかったはずです。

「消滅可能性都市」は、簡単に言ってしまえば、池袋の「再開発」の理由ではなく、加速させた切っ掛け、或いは燃料と言った方が適切です。

全てが池袋に取って都合良く展開しました。
この時期、豊島区選出の小池百合子衆議院議員が東京都知事になった事なども僥倖であり、その一つです。

「消滅可能性都市」という大義名分、お墨付きを経たことで加速していく池袋の再開発ですが、ここで考えたいのはアニメイトの主導的役割です。

歴史上の「IF」として、2012年にアニメイトが移転しなかった場合、「Hareza池袋」、「グランドシネマサンシャイン」、「Mixalive TOKYO(ミクサライブ東京)」、或いはサンシャインシティ アルパ2階の大リニューアルといったこれらの事が起こりえたでしょうか?

アニメイトが移転しない場合の「Hareza池袋」を考えると、かつて庁舎があの場所にあった頃、周辺は比較的閑静な通りでした。それが激変したのはアニメイトの影響ですが、それらのテラフォーミングが一切行われていない状況で「Hareza池袋」が誕生するとします。

アニメイトが移転しないということは、豊島区×アニメイト×ドワンゴという形も生まれず「ニコニコ本社」が移転しません。「Hareza池袋」周辺に女性が溢れるという事もない。

その状況で2014年に「消滅可能性都市」に認定されたとします。そうなっていた場合、文化で街を発展させるといっても根拠不足な絵空事に終わっていたのではないでしょうか。現状に対する説得力がありません。

アニメイト池袋本店が移転したことで、あの周辺にアレだけの女性が集まるようになり、その賑わいが目に見えるからこそ説得力を持つのであって、移転しない場合の「IF」では、豊島区が掲げる「アニメの聖地」「マンガの聖地」は成立しないでしょう。

2012年に移転ということは、移転計画自体は遙か以前に計画されています。

つまり、非常に早い段階から池袋の「再開発」を成功させる為の先遣隊としてアニメイトは動いていたわけで、「再開発」の心臓こそがアニメイトと言えるでしょう。

しかし、この「再開発」の表裏一体の構造はあまり語られません。
やはり「消滅可能性都市」によるモノとした方が誰にとっても都合が良い。

「消滅可能性都市」は、オタク街と「再開発」の関係を覆い隠す絶妙なカモフラージュになっていると共に、「消滅可能性都市」に認定されたことが逆に大義名分となり、「再開発」とその裏にあるオタク街化を進める強力なドライバーになっています。

故にそれをアピールすることに余念がない。
それこそが「消滅可能性都市」と「再開発」の真の関係と言えるのではないでしょうか。

ピカフクロウ氏
「消滅可能性都市」は豊島区にとって渡りに船だった。それが真相だね!
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